タイトーの回し者、中国語のお姉さんになり損ねる。~ISSI参加レポ~

ごきげんよう紫乃です。

 

インディゲームオンリーイベントの「Indie Speedrun Summit Ⅰ」(以下、ISSI)に参加し、Chinatrisを走らせていただきました。

ものすっごく色々あったので、その色々とやらを書き連ねていこうと思います。

 

応募するまで

せっかくなので、Chinatrisとの出会いを語らせてください。

購入まで

このイベントが告知されたのは、確か1月の上旬だったと思います。

その時は3月開催のGlitch Outbreaking(以下、GOME)と同時に情報が公開されて、GOMEはすぐ応募スタート、ISSIは後日詳細が明かされるという形式だったと認識していますが、間違ってたらごめんなさい。

 

普段はパズルボブルばかり走っている私ですが、この時は密かに「どっちか応募したいな」と思っていました。

ですが、GOMEは応募しようがありません。私が走れるゲームはバグ技を使わないので、「バグ技で魅せる」というイベントには応募できないんですよね。

残ったのはISSI。こちらはまだ半年くらい時間があるので、今から練習しても十分間に合います。インディゲームと言えば、というところでSteamのウィッシュリストを漁っていると、ふと1つのゲームが目に入りました。

 

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画像はhttps://store.steampowered.com/app/1139800/Chinatris/より引用

これしかないじゃん。

 

数日前に一目惚れしてウィッシュリストに突っ込んだChinatrisを、今度はカートに入れました。

実はこの時別のパズルゲームも一緒に買ったのですが、Chinatrisには勝てませんでした。面白いゲームではあったんですが、相手が悪かったですね。

クリアまで

さて、そんなこんなで手に入れたChinatris。悪い意味ではなく本当にサンプル通りのゲームで、新しい漢字ができる様子が癖になり、通常プレイを楽しんでおりました。

しかし、早速壁にぶつかります。このゲーム、難しすぎる。

 

最初の壁は第五章。序盤も序盤です。パズルボブルで言えばROUND 8くらいでしょうか。

土を使って圭や王を作る章なのですが、気を抜いたらあっという間に垚ができてしまい、恐ろしい速さで窒息してしまいます。

ナメてた。このゲームマジでナメてた。買ったその日にそっと投げました。

 

しかし、ここで挫けていてはRTAなんて夢のまた夢。その数日後になんとか攻略法を自力で発見し、キツいキツいと言いながらなんとか攻略を進め、第二十一章までやってきました。

無理。今度は1週間くらいChinatrisから離れました。

 

数少ない攻略情報(全て中国語)を翻訳エンジン片手に漁りながら試行錯誤を繰り返し、何とか第二十一章を突破。第二十三章までたどり着きました。

どうしろと????????? やっぱり1週間くらいChinatrisから目を背けました。

 

そんなこんなで第二十四章までクリアできた頃には、購入から1カ月ほど経っていました。

しかしながら、クリアまで1カ月もかかるパズルゲームをやる機会はそうそうないので、この過程もなかなかに楽しかったです。RPGのチャート作りも、きっとこういう楽しさがあるんでしょうね。

応募まで

無事にクリアまでの手順は理解できましたが、だからといってすぐに走れるようになるわけではないのがこのゲームです。

乱数要素が強いのでクリアが全く安定せず、全二十四章をノーコンで通すのは相当の難易度でした。

 

せっかくイベントに応募するならノーコンの記録動画を提出したいと思っていたのですが、第五章で死に、第十一章で死に、第十六章から第十九章でグダり、第二十章で死に、それらを全部乗り越えてもやっぱり第二十一章と第二十三章で死ぬという、死にゲーか貴様はと言いたくなるような走りを繰り返していました。

「これ、マジでイベント出せるんか……?」と思いながらようやくノーコンできたのが、2月末。購入から2カ月弱が経過していました。

 

無事にノーコンの動画が撮れたので、イベントの応募受付スタートに合わせて申請。

 本当はこの前にもう少し記録を詰めたかったのですが、あの2月の記録が奇跡だったのか、ノーコンクリアは全くできませんでした

ウキウキの準備編

Chinatrisをイベントで披露できることが決まってからは、初めて1人で走るマラソンイベントということもあり、「あんなこと言いたい」、「こんなことしたい」とウキウキで準備を進めていました。

この章では、まだ元気だった頃の回し者の様子を紹介します。

当選とやりたいネタ

応募開始からおよそ2カ月後、イベント本番まで1カ月弱と迫った5月23日、ISSIの採用タイトルが発表されました。

 やったぜ。

 

解説も自分でやるつもりだったので、以下のようなネタを仕込もうと考えていました。

  • 冒頭の自己紹介と最後のあいさつを中国語でやる
  • テクニックや起きやすい事故に自分で名前をつける
  • 「中国語の漢字って見たことなくて面白いなあって思うでしょう? 実はこれ日本語にもあるんですよ」と言う

 

この中でも特に頑張ったのが中国語の自己紹介で、10年前にちょっとだけやった中国語の知識を元に翻訳エンジンを使いながら文章を作り、正しい発音で読めるように密かに練習を重ねていました。

まあ、この自己紹介は全て無に帰すんですけどね。

喋りながら走ることの難しさ

当選が決まってからは、本番を想定して喋りながら走る練習を中心にしていました。

 

しかしながら、解説しながら走るのが難しいのなんの

 原稿を読みながらだと走りが疎かになるし、走りに集中すると黙ってしまうしで、ちっとも自分で解説できるようになりません。

 

仲の良い走者さんに「解説原稿どうやって作ってますか?」と尋ねたりして、最適解を探っていきました。

普段からイベントで解説をやっていますが、人が走っているところに声を当てるだけならできても、自分で走りながら解説をしたことが今までないんです。こんなに難しいと思いませんでした。

 

そんなこんなでイベント1週間前。相変わらず解説しながら走るのが苦手だったので、練習のためにこんなプランを計画していました。

  • 月曜日:配信をつけて喋る練習
  • 火曜日:裏で喋る練習
  • 水曜日:たまには息抜きにパズルボブル配信&TSS告知配信
  • 木曜日:配信をつけて喋る練習
  • 金曜日:配信上でリハーサル
  • 土曜日:本番

 

このプランが崩れ始めるのは、水曜日のことでした。

扁桃炎闘病編

イベントを見てくださった方ならご存じのとおり、私はISSIで解説はおろか、一言も喋りませんでした。扁桃炎になって全く声が出せなかったからです。

この章では、扁桃炎を発症してからイベント当日の昼までを振り返ります。

水曜日:この時点でヤバいと思っておくべきだった

実は前日の時点で喉に違和感があったこの日、本当はやる予定だったパズルボブル配信を取りやめる程度には喉が痛かったです。

しかし、この日は主催イベントのTAITO Speedrun Stationの告知日。どうしてもスペースインベーダーの日に告知をしたかったので、ロキソニンを飲んで配信に臨みました。

木曜日:この日に病院に行くべきだった

前日にロキソニンを飲んで無理やり喋ったせいもあり、起きた瞬間に「ヤバい」と確信しました。

 

しかし、この日は病院に行きませんでした。かかりつけ医が木曜休みということもあり、このご時世に発熱で普段行かない病院にかかるのはハードルが高すぎたからです。

今振り返ると、ここが最大のガバだったと思います。ここで病院に行っておけば、もう少し苦しまずに済んだでしょう。

 

さて、病院に行こうが行かまいが、ヤバいことに変わりはありません。

取り急ぎISSIの走者用チャンネルで「声が出ないので今から解説を依頼してもいいですか」と問い合わせると、Online Marathon Eventers主催のCmaさんが20分ほどでお返事をしてくださいました

めちゃくちゃ不安だったので、即レスを頂けてとても安心しました。その節は本当にありがとうございました。

 

許可が下りたので、次は実際に喋ってくれる人を探しました。

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この時はまだ喋れるようになる可能性を捨てきれなかった

ここで名乗り出てくれたのが、当日に解説をしてくれたぽ氏お兄さんです。崇め奉る勢いで、ISSIのコメンテーター申請フォームのアドレスを送りました。

本当はこの時に原稿も送りたかったのですが、他の人に解説をお願いするための原稿を用意していなかったですし、用意する余裕もありませんでした。本番2日前なのに。本当に申し訳ない。

金曜日:ドクターストップと生き地獄

木曜日は起きた瞬間に「ヤバい」と思いましたが、この日は起きた瞬間に「死ぬ」と思いました

病院に行くしかないと思い、自分の病状をまとめたメモを繁忙期の主人に渡して、「病院が開く9時に電話をして、午前中の予約を取ってくれ」と依頼しました。

 

かかりつけ医は小さな町医者で、このご時世「発熱患者は診れません」と断られるかと思ったのですが、無事に予約が取れたとの連絡があり少し気が楽になりました。

おかげで病院の時間までに解説原稿の作成もでき、11時の予約に合わせて病院に行きました。

 

診察は、かかりつけ医が喉を見て「あ~、扁桃炎だね」と言っただけで即終了しました。

看護師さんが「先生に訊いておきたいことある?」と尋ねてきたので、筆談で「明日オンライン会議があるんですが」まで書いたところで。

 

「あ~、無理だね。少なくとも今週末は無理しちゃ駄目だよ」

 

ドクターストップが出ました。

それまでは心のどこかで信じていた、「1日で劇的に良くなって喋れるかもしれない」という希望が完全に打ちのめされ、失意の中ぽ氏お兄さんとISSIの運営さんに連絡をしました。

土曜日:もうダメかもしれない

そんなこんなで迎えた当日。ここまで省略してきましたが、木曜日からの3日間、私はこんな生活を送っていました。

  • 午前4時前後に目が覚める
  • 唾液を飲みこむのも痛いので、食事はおろか水分も摂れない
  • 痛み止めを飲めば何とか食事ができる
  • 体温は36.6~37.6度の間を行ったり来たり
  • 身体を起こしているとふらふらするので、基本は横になって過ごす
  • 痛み止めを飲まないと眠れない(そして痛み止めが切れる明け方に目覚める)

イベント当日も、上記の項目全てに該当していました。アホじゃん。RTAイベントで走る体調じゃないよ。

病院で抗生物質を処方されたのですぐ楽になると思っていましたが、抗生物質が効くのは飲み始めてから48時間後からとのことで、全く間に合いませんでした。

 

金曜日までは「土曜日には良くなってるかも」と思っていましたが、さすがに当日はそうもいきません。

イベントが始まる正午になっても体調は一向に良くならず、心のどこかで「あ、もうダメかもしれないな」と思っていました

 

 このツイートをしたのが、一番心が折れそうになっていた時です。

みんながこのハッシュタグを使ってくれて、本当に救われました。ありがとうございました。

本番

 ISSI最初のタイトルであるゆめにっきを見届け、仮眠から目覚めた後、午後3時ごろにロキソニンを飲みました。

これまでの経験上、「ロキソニンは飲んでから効くまで30分、効果は4時間、一番調子が良くなるのが飲んでから2時間~2時間半後」ということが分かっていたので、出走予定時刻の午後5時半ごろにピークが来るよう逆算した形です。

 

薬が効いてきた午後3時半ごろ、ぽ氏お兄さんと一緒に最初で最後のリハーサルを行いました。

彼はこれまでChinatrisをやったことがなかったと思うのですが、このためにわざわざ購入してクリアまでしてくれていたことが解説中のセリフから発覚し、めちゃくちゃ嬉しかったです。あと、いっぱい褒めてくれたのも嬉しかったです。ありがとね。

この時のタイムは大体25分くらい。「ひょっとしたらPBかもしれない」と思ってしまうほどの良い走りでした。

 

リハーサルという名の一発通しを終え、痛み止めが効いている時にしか食べられない食事を済ませて、本番を待ちました。

直前の音量チェックも、他の走者さんとのやりとりも、全てテキストチャンネルで行うしかありません。本番を終えたSnaffulさんとおばまさんが控え室のVCに戻ってきて、「今日は紫乃さん喋らないんですか?」と声を掛けてくださった時も、テキストチャンネルでこう返すしかありませんでした。

  

何も喋れません かなしい お兄さんに全てを託します

 

そうして迎えた本番。頭は確かに回りきっていませんでしたが、全体的に悪くはなかったと思います。

心残りがあるとしたら、第十八章で集中力が途切れてしまい、後の章がもたついてしまったところでしょうか。特に、第二十三章の「平を作ろうとしたら、真ん中の干が十のままだった」というミスはこれまでやったことのない類のものだったので、反省すべきポイントだと思います。

 

結局自己ベストを更新できたわけですが、その最大の理由は「記録が詰まっていなかったこと」だと思います

ChinatrisのRTAはイベントに出るために覚えたので、記録狙いというよりも、イベントで安定してクリアするための練習を中心にしてきました。配信でしかタイムを計測せず、裏では区間練習や研究しかしていなかったので、元気な時に本気で記録を狙っていたらこうはならなかったでしょう。

 

出番を終えて控え室のVCに戻ると、ローション侍のHarutomoさんとけだまさんが迎えてくれました。

発熱のせいで記憶が曖昧なのですが、めちゃくちゃに褒めてもらえたことだけは記憶に残っています。ありがとうございました。この時の会話が妄想でないことを願うばかりです。

率直な感想

自分の出番が終了しての率直な感想は、「悔しい」という一言に尽きます

 

参加が決まってからの1カ月弱、このイベントに向けて、自分なりに準備を進めてきました。それが数日前に全部無駄になってしまう悔しさは、筆舌に尽くしがたいものがあります。

これまでも、イベントに参加して「思い通りの走りができなかった」と悔しい思いをしたことはありますが、それは全て「自分の準備してきたことを出しきったうえでの悔しさ」でした。

今回は、準備したものが全く披露できないまま自分の出番が終わってしまったわけで、これまでの準備や努力が無駄になった時の悔しさは、これまでのイベントで感じたどれとも比にならないほどでした

 

実際に、完走して自己ベストを更新した後、私はテキストチャンネルにこんな言葉を残しています。

 

喋れなかったの悔しいけど楽しかったです ありがとうございました。

 

私のような思いをしないよう、皆さんはイベント前の体調管理には充分お気を付けください。

 

また、今回こんな体調で無理やりイベントに参加したがために、運営の皆さんや解説のぽ氏お兄さんをはじめ、多くの方にご迷惑とご心配をおかけしてしまいました。

いい年した大人が体調管理もできず、お恥ずかしい限りです。皆様の支えがあって、何とかやり抜くことができました。改めて感謝申し上げます。

 

なお、今回は「イベントに穴を開けることだけは避けたい」と思って執念で走り抜きましたが、本来RTAは体調の悪い時にやるものではありません

皆さんは体調が悪い時はRTAをせず、ちゃんと病院に行き、水分と栄養を摂取してゆっくり休みましょう。

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さて、私の出番は終了しましたが、ISSI自体はまだ終わっていません

2日目は6月26日(土)の正午から始まります。詳細は、運営のポンズさんが執筆した記事をご参照ください。

rtagamers.com