RTAイベントのPRにプレスリリースを活用した話

ごきげんよう紫乃です。

去る7月8日に行われたRTA BootCampのスペシャル回が、電ファミニコゲーマーをはじめ大手ゲーム系ニュースサイトに取り上げられていたのはご存じでしょうか。

 

 

RTA in Japanなどの大規模なRTAイベントが取り上げられていることはよくありますが、RTA BootCampのような平日の夜に数時間だけ開催されるイベントが相次いで取り上げられることを不思議に思った人もいるかもしれません。

実は、今回はプレスリリースを活用し、各社にRTA BootCampの記事を掲載してもらうよう働きかけていました。想像以上の収穫があったので、どんなことをしたか紹介したいと思います。

 

ただし、この記事は「みんなもプレスリリース使った方がいいよ!」と広く推奨するものではありません。

むしろ、これまでプレスリリースを書いたことがない人がゼロから勉強するのであればコスパが悪すぎるので、別のPR方法を選んだ方が効果的とさえ思います。

その理由も併せて説明しますので、RTAイベントのPR方法を日々模索している人の一助になれば幸いです。

 

プレスリリースとは?

さて、ここまでさも平然と「プレスリリース」という言葉を使ってきましたが、一体何のことだと思っている人も多いと思います。というか、知らなくて当然です

共同通信PRワイヤーは、プレスリリースを以下のように定義しています。(太字は筆者)

 プレスリリースとは、新商品の発売や新サービス、新規事業の開始、あるいは経営・人事などの企業情報を、ニュース素材としてメディアの担当者が利用しやすいように、文書や資料としてまとめたものです。

(引用:プレスリリースとは、どのようなものですか?|よくある質問|共同通信PRワイヤー

 

つまり、企業が「うちの会社の情報をニュースにしてください!」とお願いするための書類がプレスリリースです。

これだけ聞くと「え、RTAイベントの主催は企業じゃないからダメじゃん……」と思うかもしれませんが、プレスリリースは形式さえ守れば個人でも送れます。それを証明したのが、今回のRTA BootCampのスペシャル回です。

プレスリリースのメリット

では、そんなプレスリリースにはどんなメリットがあるのでしょうか。

メリット① メディアに掲載される可能性がある

一番のメリットは、メディアに掲載される可能性があることです。

RTA BootCampの場合、複数のメディアに掲載されて露出が増え、これまでこのイベントを知らなかった層にも目にしてもらえたのではないかと思います。

 

さらに、今回は参加者の皆さんからも「自分の名前が載っている」と反応を頂けました。

メディアに掲載されることが、イベントに参加する走者のモチベーションにもつながるのだと考えると、その効果は単にPRだけには留まらないと言えます。

メリット② 費用をかけずにPRできる

通常、広告を出すには広告費が必要ですが、プレスリリースを出すための費用はほとんどかかりません。

むしろ、プレスリリース配信サービスを使わずに自分で配信するのであれば、かかる費用はゼロです。今回も、費用は全くかけずに記事を掲載してもらうことに成功しました。

記事が掲載されるまでにやったこと

ここからは、実際に記事が掲載されるまでにやったことを時系列で紹介します。

ニュースにする価値がどこにあるか検討する

プレスリリースを送るうえでの肝は、メディアがニュースにする価値をどこに見出すか考えることだと思います。まだプレスリリースを1文字も書いていませんが、この段階がプレスリリースの作成で最も重要と言っても過言ではありません。

RTA BootCampの場合、以下のような強みがニュースにする価値になると考えました。

  • 史上最高頻度のRTAラソンイベントであること
  • トッププレイヤーがRTAを披露すること
  • ストーリーがあること

 

メディアは人の関心を引く記事を書く必要があるので、「一番」に注目する傾向が強いです。RTA in Japanを取り上げた記事のタイトルが「国内最大規模の」から始まるのも、これが理由です。

RTA BootCampの場合、頻度の高さが武器になると思ったので、事前にGoogle検索などでこれより頻度が高いRTAラソンイベントがないことを確認し、「史上最高頻度」というフレーズを使うことに決めました。

 

トッププレイヤーが出てくるという点は分かりやすいと思うので割愛しますが、「史上最高頻度」というフレーズに加えて重視したのは、3つ目の「ストーリー」です。

RTA走者の訓練場としてイベントを開催してきたRTA BootCampが、より質の高い訓練場を提供するために新チャンネルを作る。開設記念に7人の教官がお手本となる走りを披露し、新米プレイヤーに「この人と同じ舞台に立てるんだ」と思わせる――という隠されたストーリーを提供することで、ただのイベント告知で終わらせない物語性を持たせられます

送り先を選定する

プレスリリースは、数を打てばいいというものではありません。PRする内容がメディアに合っていないと、無視されて終わりです。

たとえば、同じゲーム系のニュースサイトでも、スマホゲームの情報に特化したサイトにRTAイベントのリリースを送ったところで掲載されないでしょう。

今回は、RTAイベントの記事掲載実績があるニュースサイト6社に絞りました

プレスリリースを書く

さて、やっと本題までやってきました。実際に書いたプレスリリースは、こちらからPDFで閲覧できます。

なお、プレスリリースの書き方を基礎から説明していると長くなるため、ここでは要点だけ記します。どうしても書き方が知りたい人は、PRTIMESの記事をどうぞ。

prtimes.jp

タイトルとサブタイトルに全てを懸ける

プレスリリースは、その費用対効果の高さ故にさまざまな企業で活用されています。つまり、メディアの側に立ってみると、毎日山ほどプレスリリースが届いているということ。

山のようなプレスリリースの中から記事にしてもらうためには、タイトルで興味を引くことが何よりも重要です。

 

今回のリリースでは、以下のようなタイトルとサブタイトルを採用しました。

史上最高頻度のRTAイベント「RTA BootCamp」1周年記念イベントを開催します
世界トップクラスの7人の教官が出演 RTAプレイヤーの”訓練場”は新たなステージへ

タイトルとサブタイトル合わせて80字超えは少し長すぎるのですが、この80字に伝えたい内容が全部含まれています

特に、一番の強みである「史上最高頻度」はタイトルの冒頭に入れました。残りの2つをサブタイトルで補い、興味を引かせて本文へ誘導しようという算段です。

限られたスペースでストーリーを明記する

プレスリリースの本文は比較的自由に書けますが、かといって長々と書いたところで全く意味がありません。目安としては、A4用紙1~2枚で完結する分量が望ましいとされています。

今回は、イベント概要を1ページ目に収め、走者紹介などを2ページ目以降に書く予定でいました。とすると、イベントについて自由に書けるエリアはA4用紙半分程度しかありません

そこで、RTA BootCampの説明は最終ページに回し、本当に語りたいストーリーを1枚目に詳しく書きました

走者のプロフィールを書く

今回の目玉の1つが、参加する走者の豪華さです。普段からRTAに興味を持っている人なら名前を見ただけで驚くようなメンバーですが、プレスリリースを受け取った記者がそこまでRTAに詳しいとは限りません。

そのため、スケジュール紹介と同時に走者の簡単なプロフィールを掲載し、いかに豪華なメンバーが揃っているかをアピールしました

プレスリリースを送る

6月30日、RTA BootCampの告知配信が終了する20時30分に合わせて、プレスリリースをメールで送りました。

今回送付したメディアは、メールアドレスを公開しているところとメールフォームで受け付けているところの2種類があったので、対応を少しだけ変えています。

と言っても、メールフォームの方はプレスリリースとイベントロゴがダウンロードできるGoogleドライブのURLを掲載して、メールではそれに加えてプレスリリースのPDFを添付しただけです。

 

いずれの場合も、重要なのはプレスリリースを開いてもらうことです。

つまり、「このプレスリリースの内容を取り上げるメリットがある」というアピールが重要だということ。今回、メール本文にはRTAプレイヤーの読者も多い貴メディア」というフレーズを入れ、メディアを選んで送っていることをアピールしました。本当に効果があったかは分かりませんが、あったと思いましょう。

問い合わせ対応と記事掲載確認

プレスリリースは、出せば終わりというわけではありません。記事を書くうえで疑問点などが生じれば、メディアの記者から問い合わせが来る可能性もあります。

今回は、起きている間は1時間おきにメールボックスを確認し、問い合わせが来ていないか確認しました。仕事でもここまで頻繁にチェックしません。

また、記事が掲載されたかどうかを確認するのも大事な作業です。この作業は、単に「掲載されました!」というアピールをするためではなく、後の分析に必要です。

プレスリリースの効果

今回は、リリースを送った6つのメディアのうち2つに掲載されました。他のメディアにも転載されているので、確認できただけで4つのメディアにRTA BootCampの記事が載ったということです。

正直なところ、私が仕事でプレスリリースを出していたときは100社に送って10社載ればいい方だったので、この数字だけ見れば大成功だと思います。

 

しかし、プレスリリースの真の目的は記事掲載ではありません。

今回のRTA BootCampでは、「新しいチャンネルに視聴者を呼び込むこと」が一番の目的でした。実際に視聴者数が増えたかどうかを確認して初めて「プレスリリースの効果があった」と評価できます。

 

結論から言えば、平均視聴者数や最大視聴者数などの数字は、直近5回の平均よりほんの少し高い程度で、ほとんど変化がありませんでした。

とはいえ、立ち上げたばかりのチャンネルで、フォロワーが6,000人以上いるチャンネルで開催していた頃と同じ水準の視聴者数を獲得できているという点は評価に値すると考えられます。

プレスリリースの効果は絶大ではなかったものの、何かしらの効果があったと言えるのではないでしょうか。

それでもプレスリリースを強くおすすめしない理由

さて、ここまで読んでいただいた皆さんの中には、「そんなに上手くいくなら、プレスリリースを送ってみようかな」と思った人もいるのではないでしょうか。

しかし、冒頭でもお伝えした通り、これまでプレスリリースを書いたことがない人がゼロから勉強するのはあまりおすすめしません。

その理由を一言で示すなら、「大変なのに絶対掲載されるわけではないから」です。

 

プレスリリースは、個人が出したものも大企業が出したものも同じ「プレスリリース」という枠組みで扱ってもらえます。しかし、それは裏を返せば、「個人も企業の広報担当者と同等の対応が求められる」ことと同義です。

プレスリリースの書き方や送り方、その後の問い合わせ対応に至るまで、「個人が趣味でやっているから」という言い訳は通用しません。こちらが趣味でやっていようと、プレスリリースを受け取る相手は仕事で記事を書いています。

完璧な対応ができたところで、実際に記事になるかはメディア次第です。苦労してプレスリリースを完成させたところで、絶対に掲載されるという保証はありません。

 

私は業務でプレスリリースを送った経験があったのでこの方法を選択しましたが、全く知識がない状態だったらまず選ばなかっただろうと思います。

今回は運よく記事が掲載されたものの、箸にも棒にも掛からない可能性は十分にありましたし、その可能性を考慮して他のPR方法の準備を進めていました。

確実性を求めるなら、それこそRTAGamersで記事を書いた方が確実に掲載されますし、RTAに興味がある人の目に確実に触れます

 

長々とネガティブなことを書き連ねてしまいましたが、熱意と覚悟があるなら挑戦する価値はあると思います。

万人に広くおすすめできるものではありませんが、「やってみたい!」と強く思ったら、ぜひ挑戦してみてください。

プレスリリースはRTAイベントのPRツールたり得るか

メディアに直接売り込めるプレスリリースは、手間こそかかりますが、上手に使えばRTAイベントの大々的なPRにつながると考えます。

RTAイベントをより盛り上げる方法の1つとして活用するのもいいのではないでしょうか。

 

 

でも、正直なところ、プレスリリースはもう当分書きたくないです。