RTA好きに贈る所得税と寄付金控除の話

ごきげんよう紫乃です。

去る8月15日、RTA in Japan Summer 2021が閉幕しました。回を重ねるごとに盛り上がりを増すRiJでは、今回から「国境なき医師団」へ直接寄付できる仕組みもでき、多額の寄付金が集まりました。

 

ところで皆さん、国境なき医師団に寄付をすると、税金がちょっと安くなるってご存知でした?

この記事では、その仕組みについて簡単に説明します。

 

【2021年12月26日追記】

RTA in Japan Summer 2021期間中の寄付において、国境なき医師団からの領収書が発行されないため寄付金控除を受けられないとの情報がありましたが、RTA in Japan Winter 2021では領収書を請求できる仕組みが整備されました

詳細は後の項目で解説します。

なんで税金が安くなるの?

税金が安くなるのは、「寄付金控除」という控除が受けられるからです。

寄付金控除が何なのかは追って説明するので、今は「寄付すると税金が安くなる仕組みがあるんだな」とだけ思っておいてください。

この寄付金控除を利用したのが、かの有名な「ふるさと納税」です。自治体に寄付をすると税金が安くなり、お礼に名産品も貰える人気の制度ですね。

 

もう少し込み入った話をすると、寄付金控除というのは、所得税や住民税の金額を計算する際に一定の金額を引いてくれる制度です。

この話をするには所得税の計算方法を説明しなければいけないので、早速所得税の説明に入りましょう。

所得税の計算方法

所得税は、1年間の所得を10種類に分けて所得金額を計算し、合算して求めた課税標準から所得控除を差し引いて課税所得金額を求め、課税所得金額に税率をかけて所得税額を出し、そこからさらに税額控除を引いて求めます。

いや、意味わかんないですよね。なので、もう少し分かりやすく説明しましょう。

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家計というゲームにおいて、勇者がスライムから受けるダメージを計算しましょう

ここから先は、所得税額の計算をダメージ計算で説明します。この記事で「ダメージ」と言ったら、それは「所得税の金額」のことです。いいですね?

なお、この記事ではとにかく分かりやすく説明することを第一にしているので、細かい説明などは一切省略します。詳しい話が気になったら、各自調べてください。

 

皆さんも社会の授業で習ったかもしれませんが、このゲームのダメージ計算は、勇者のHPに特定の割合を掛けて求めます

さらに、その割合は一定ではなく、HPが多ければ多いほど高くなります。このダメージ計算方法を、「累進課税」と言います。

 

しかし、このゲームはスライムだけ倒していればいいわけではなく、家賃やら食費やら交際費やら、いろんなモンスターを倒していかないといけません。スライムからHPを大量に奪われたら困りますよね。

なので、ダメージ計算の際にはいろいろと引き算して、スライムから受けるダメージをある程度減らしてくれます。この仕組みが、「控除」です。

 

控除には大きく分けて2パターンあります。まずは、一定の割合を掛ける前にHPを調整してくれるものです。

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所得控除のイメージ

本来なら、この勇者のダメージ計算ではフルHPの500に一定の割合を掛けますが、装備などを考慮して色々差し引いてくれるため、実際の計算式では250に一定の割合を掛けます。この差し引かれるものが、「所得控除」です。

 

一定の割合を掛けた後は、それがそのままダメージになるのではなく、更にそこから差し引かれます。

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税額控除のイメージ

その結果、勇者のダメージは10となるわけです。これが「税額控除」です。

このゲーム、意外と勇者のダメージ計算に優しいと思いません? 運営もなかなか頑張ってると思いますよ、国税庁って言うんですけど。

 

ちなみに、このダメージ計算は、「万円」という単位を付けていただくと実際の日本企業で働く勇者の所得税額の一例になります。だから何だという話ですが。

寄付金控除ってどのくらいお得なの?

さて、やっと寄付金控除の話に戻ってきました。

つまるところ、寄付金控除はHP調整の1つです。「剣持ってるからマイナスしてあげるね」、「盾持ってるから優遇してあげるね」と同じノリで、「寄付したからダメージ少なくしてあげるね」というわけです。

 

先ほどもお話したとおり、控除には2種類あり、掛け算する前に引くものとした後に引くものがあります。

実は、寄付金控除は先に引くか後に引くか、どちらか好きな方を選べます。つまり、得する方を選んでいいってことです! 運営ありがとう!!!

 

では、どちらを選ぶのがお得なのでしょうか。先ほどの勇者に1万2,000円を寄付してもらって、両方の金額のシミュレーションをしてみましょう。

 

まずは、掛け算する前に引く「所得控除」のパターンです。

所得控除の場合、寄付額から2,000円を引いた額を、掛け算する前の金額から控除できます。(ただし、寄付金額は掛け算する前の金額の40%が上限)

1万2,000円を寄付した場合の控除金額は、12,000-2,000=10,000円です。先ほど勇者のHP1が1万円という話をしたので、こんな感じになります。

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思ったより減ってないな?

ここから更に0.1を掛けるので、実際に減ったのは0.1、つまり1,000円しか税金が減っていません。HPだとしたら、ゲームによっては切り捨てられる値ですね。

 

では、掛け算した後に引く「税額控除」はどうでしょうか。

税額控除の場合、寄付金額から2,000円を引いた金額に0.4を掛けた額が税額から控除されます。(ただし、寄付金額は掛け算する前の金額の40%が上限で、控除額は所得税額の25%が上限)

今回は、12,000-2,000=10,000円に0.4を掛けた4,000円が最終的なダメージ量から控除できます。

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所得控除より受けるダメージが0.3減った

税額控除の場合、控除される金額がそのまま安くなるので、4,000円安くなりました。所得控除と比べると3,000円もお得なので、一般勇者であれば税額控除を選んだ方が良いです。

所得控除がお得になるのは年収4,000万円以上か数百万円の寄付をした場合なので、ガチの石油王でなければ税額控除を選びましょう。

 

ちなみに、冒頭でも触れたふるさと納税は寄附金控除を使用したシステムなので、ふるさと納税以外で寄付金控除を受けると上限額が変わります

ふるさと納税を利用している勇者の皆様が今回のイベントでの寄付金で控除を受ける場合は、上限額を再度計算しておいてくださいね。

東京都民は都民税もお得に

これは国境なき医師団に寄付した場合ですが、東京都に住んでいる人は、所得税だけでなく都民税も控除されます

市区町村によって異なりますが、寄付金額から2,000円を引いた金額に0.1または0.04を掛けた額が控除されます。(ただし、寄付金額は掛け算する前の金額の30%が上限)

 

仮に先ほどの勇者が東京都新宿区に住んでいた場合、12,000-2,000=10,000円に0.04を掛けた400円が都民税から控除されます。

所得税と合わせて、4,400円もお得になりました。これで新しいゲームが買えますね。

寄付金控除を受けるには

そんなお得な寄付金控除ですが、受けるにはとあるダンジョンの攻略が必要です。そう、確定申告です。

確定申告とは、「自分のフルHPとダメージ量を自分で計算して運営に届け出ようね!」という、毎年2月16日から3月15日に行われる期間限定イベントです。本来であれば勇者は全員参加必須のイベントですが、企業にお勤めの勇者は「年末調整」というクエストをこなすことで免除されます。

 

寄付金控除を受けるには、確定申告の際に寄付の領収書が必要です。これがないと控除は受けられません。来年の確定申告まで大事に取っておいてください。

なお、確定申告についてはそれだけで記事がいくつも書けてしまうので、今回は省略します。 詳しい攻略法は各々調べておいてください。

 

と、ここまで長々と寄付金控除について説明してきましたが、普段年末調整しかしたことのない勇者がいきなり確定申告ダンジョンに潜ると相当苦労すると思うので、無理に寄付金控除を受けろとは言いません。

税額控除の金額を計算して「このダンジョンの報酬、割に合うか?」と考えていただくのがいいかと思います。

RTA in Japanを通じて寄付する時の注意点

【この章は、RTA in Japan Summer 2022が開催された2022年8月15日時点の情報に基づいています。今後情報が変更になる可能性もあるので、必ず最新の情報をお確かめください。】

 

さて、RTA in Japan Winter 2021以降は、新たに「国境なき医師団へ領収書の発行を依頼する」ことが可能になりました。

この領収書がないと寄付金控除が受けられないので、忘れずに申請しましょう。あと、領収書発行依頼フォームの内容もちゃんと読みましょうね。

このシステムだけでも非常に画期的なのですが、更になんと、RTA in Japan 関連の問い合わせ専用のメールアドレスまでできています。すごいですね。マジでどうしようもなく困ったら、このアドレスに相談してみましょう。

 

ただし、この領収書発行にも注意点があります。

注意点① 1回1,000円以上でないと領収書が発行されない

これは寄付のページにも太字で書いてあるのですが、人間は文章を読まない生き物なのでここでも言っておきます。1回の寄付が1,000円以上でないと、領収書は発行されません。

そもそも寄付金控除の金額は「寄付金額から2,000円を引く」ところから控除額の計算がスタートするので、2,000円以上寄付していないと無意味です。なので、寄付金控除を目的とする人ならそこまで気にすることはないと思います。

 

ちなみに、「いろんなインセンティブにちょっとずつ寄付したい」という場合でも、寄付した金額内で好きなインセンティブに自由に額を振り分けられるので、一括で寄付してちゃんと領収書を発行してもらいましょう。

注意点② どの年の確定申告で使うか確認が必要

確定申告をする際には、どの年の申告で寄付金控除を使うかの確認が必要です。

夏の時期であればそれほど気にする必要はありませんが、年末に行われるイベントでは特に注意しましょう。

 

たとえば、RTA in Japan Winter 2021で直接寄付して受け取った領収書は、2021年分の確定申告には使えません。使えるのはもう少し先の話です。

これも寄付のページに書いてあったのですが、ちょっとわかりにくいので簡単に説明します。

 

確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間の所得税を計算するもので、毎年2月16日から3月15日に前年の所得税額を申告します。

つまり、2021年の分は、2022年の2月から申告するってことですね。

 

では、RTA in Japan Winter 2021で年の瀬迫る12月末に寄付し、実際に国境なき医師団に寄付が届いたのが2022年の1月になった結果、2022年の日付で領収書が届いたら、この寄付は2021年の計算に入れていいのでしょうか?

答えはNOです。寄付金控除では、どの年に寄付をしたかの判定は領収書の日付によって決まります

 

ということは、RTA in Japan Winter 2021で寄付した金額は、2021年分ではなく2022年分の控除対象になります。

つまり、請求書を受け取っても、2021年分の確定申告である2022年2月開始分では使えず、2023年に行う2022年分の確定申告で使うので、1年ほど領収書を保管しておく必要があるのです。かなり先の話ですね。

 

なお、RTA in Japan Summer 2022で寄付した分は、特に何も考えずに2022年分の確定申告で使えばOKです。

とはいえ、こちらもまだ半年くらい先の話なので、なくさないように気を付けましょう。

RTAを楽しんで世界を救って節税にもなるって最強じゃん?

というわけで、ざっくりですが寄付金控除について紹介しました。

今回の説明は本当にざっくりしているので、本当に確定申告をして控除を受けようと思っている場合には、国税庁のホームページなどをご確認ください。

 

参考文献

寄付・募金の寄付金控除・税制優遇措置 | 国境なき医師団日本

No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁

寄附金を支出したとき|国税庁